MIMOCA NEWS 011



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このコーナーでは、美術館で働く人にインタビューし、普段なかなか知る機会のない舞台裏や職員の声をご紹介します。
今回はワークショップスタッフの一人、吉川裕恵さんにお話をうかがいました。スタッフとなって今年で5年目、これまで62のワークショップ、加えて2003年にスタートしたオープン・スタジオにもたずさわってきました。

Q.普段の仕事を教えて。
A.うーん・・・。オープン・スタジオの粘土の管理をみんなでやってますねえ。常に気に留めてます。あとは毎月やるワークショップの準備を。徐々に、ね。合間に(応募者の)抽選とか。今は夏休みが終わったばかりで残った材料の細かい片付けをやってます。


Q.大きく分けると、どんな事をしてるの?
A.毎月のワークショップと、オープン・スタジオと、夏のオープンワークショップ、です。


Q.では、毎月のワークショップについて教えてください。
A.まず準備です。それぞれのワークショップに担当者がいるので、その担当者の指示で材料や道具を買出しとか注文したり、チラシ作ったり、応募者のハガキやメールをチェックして、看板を準備、それから、シートを敷くか敷かないか、机出すかどうか、椅子、壁、材料の出し方・・・。


Q.「材料の出し方」?
A.材料を置く場所です。会場設営は担当者の持ってるイメージで、雰囲気を作るほうがいいのか、無い方がいいのか、やりすぎてないか、必要か、必要でないか・・・。
準備の段階で、スタッフみんなで話し合いをします。見本も作る。やっぱり一回やってみないと、みんなもわからない。進行の流れもやってみて、みんなに意見をもらって、直して、本番を迎えます。


Q.いよいよ本番。どんな感じ?
A.来たなって感じ。進行担当のときは緊張する。始まる前は不安がすごくある。自分でえんかなーって。周りに励まされて、やるぞという感じでやります。本番にならないと子どもたちの反応が見えないし、特に初めて参加する子や、低学年の子が多いと、ダンボールカッターみたいな危ない道具を使うこともあるので怪我しないようにって、・・・緊張します。


Q.本番の日、朝一番から、時間を追って教えて。
A.自分が進行のときは早めに来ますね。で、一人でフー、フー(深呼吸)ってね。忘れていることが無いかチェックしたり、ストレッチですね。フー、フー。のど潤したりね。すごくのどが渇くんですよ。
それから、スタッフみんなで直前の準備、打合せをします。30分ほど。
10時になって、子どもたちが階段を上がってきたら、受付でハガキをもらって、名簿チェックして、名札渡して、「中に入ってね」。
まず挨拶。それから内容を説明。お母さんが応募して連れて来られて、当日何しに来たやらその時点で知らない子もいるので、例えば二日で制作するときなんか、ちゃんと言っておかないと、一日で全部作ってしまったりとかね。あと危ない道具のことも言わないと。説明を長い目に丁寧にしますね。で、子どもたちにだんだんイメージがわいて来て、やる気満々、はよ作りたいってなってきたら、材料を選んでもらって制作に入ります。
制作中はスタッフが回って、悩んでたら顔で分かるでしょ?だいたい。顔を見つつ声かけたりします。大人は結構簡単に考えて、こんなんすぐ出来るやろということが子どもは意外に出来ない。結ぶとか、雑巾しぼるとか、やったことがないんですね。時間がかかったり、出来るはずなのに難しい。教えて、やり方がわかれば出来るんです。
逆に、これは無理やろうということが出来ることもよくあります。難しいと思って長めに時間とってあったのに、簡単にやっちゃって、えっ、はや〜、子どもってすごいなーって。
終了15分前には片付けをきちんとしてもらいます。目を放した隙に「あれ?おらんやんか。」ってこともありますが、すすんで掃除をやる子もいます。
帰る前に、作品名と感想を書いてもらって、作品はそのときによって置いて帰るかお持ち帰りです。


Q.子どもたちが帰ったら?
A.帰ったねえ、って。終わったあとは、シーン。ためいき。元気な子どもと接すると、スーッと抜かれていくというか、2時間くらいなのに結構疲れる。
片付けして展示作業。あと参加人数出して、名簿まとめて、です。


Q.お疲れさまでした。ではオープン・スタジオについてどうぞ。
A.粘土は常に管理。ベストな状態で出してあげたいですから。土練機からガビガビって出てきたら使う方もイヤじゃないですか。小さい子は握力がないから、粘土はやわらかい方がいい。粘土当番を決めてまわしています。
準備は、床にシート敷いて、壁にシート貼って、机にシート貼って。絵具コーナーは、壁に紙を貼るんですけど、これが案外大変。次の日の朝、重くて落ちていたり、破れてたり。長くなると紙も重いんやなと気付いたかな。絵具は本番の前日、粉絵具を水で溶いていい濃度にしておきます。
絵具は、色は4色、赤・青・黄・白を混ぜて作るんですけど、緑が欲しいと言われたら、まずどれを混ぜたらいいか聞く。子どもが間違えても、最初は言われたとおりにそれを混ぜて「これ?」って見せる。すぐこっちで作ってあげたりはしないですね。お母さんが横で答えを言わないで欲しいな。子どもに、考えて欲しい。子どもは結構知らないんです。勉強になっているのでは、と思うときがあります。
最後はやはり、片付けをしてもらいます。床を掃いたり。
実はその後のスタッフの片付けが割と大変。壁は、絵具が垂れてるんで乾かしてはがしたり、床もこぼしてますんで、足跡とかね・・・。粘土は土練機にかけます。全部。結構時間がかかるんですよ。で、終わって、ふー、早いよねー、一日がって。
こないだモップを買いました。それまで手で少しずつ拭いてたんですけど、ハッて「モップやったら早いんちゃうん」て気付いて、すぐ買いに走りました。やっぱり道具は大事やなー。時間短縮。うん。
・・・オープン・スタジオもワークショップも、「準備・本番・片付け」、ですね。意外に大変なんですよ、準備、片付けとも時間がかかりますし。その辺あんまり知られていないと思うけど。


Q.で、「本番」が一番短い?
A.一番大事。


Q.この仕事をやっててよかったなーと思うことは?
A.個人的なことですけど。もともと子どもがあんまり好きではなかったんですよ。そういうのがなくなって、好きになれたかな。大人のちょっとした一言で、子どもはすごく変わるから。こちらのアドバイスでいいものが出来たら、すごくうれしい。
これも自分のことですけど、人前でしゃべるのが苦手なんですよ。それが進行をさせてもらって、出来るようになった。ちょっと精神的に強くなった、少し克服できたな、と。最初は進行の前はご飯も食べれなかった。
あと、いい作品見てると、「いいなー」って。一人で勝手に、にーっとして見てしまう。
子どもがうれしそうに作ってるのを見てるとうれしいし、感想に楽しかったと書いてくれるとやっぱりうれしいですね。


Q.作ることがもともと好きなの?
A.好きは好きですね。でもこの仕事やってて、例えばお店で商品として売られているものを見て「これ作れるんちゃうの」とか、お店の装飾を「どうやって作ったんかな」って考えながらジーッと見ていて怪しまれたりとか、気になるようになったかも。


Q.今後やってみたいことは?
A.ガラスを使って。意外と子どもでも扱えるらしいです。
あとジェルキャンドル。大事なものを入れるとか。溶けないものですけどね。え?火をつけたら?・・・やっぱり燃えますかねえ?


Q.印象に残っていることは?
A.中山ダイスケさんのワークショップ「ぼく対ぼく わたし対わたし」。「自分と同じ大きさの自分」、私も試作で作らせてもらったけど、おもしろかった。子どもが作ってるの見てると、みんな顔がそれぞれ似てるんですよ。「うわ、いっしょやん、顔。すごい。」って。特徴を良くつかんでてうまいんです。終わってから、みんなが自分と同じ大きさの自分を大事そうにかかえて持って帰るところがまたかわいかった。自分と戦うパフォーマンスもおもしろかったな。中山ダイスケさんも楽しそうだったですよ。リング作るのなんか、手早く作って、さすが早いなって。


Q.MIMOCA子どもワークショップのPRをどうぞ。
A.作家さんと出会えるチャンス。今現在活躍してる作家さんと出会える、それも小さいときの経験として。何人もの作家さんが「全部覚えてなくていい、ちょっとだけ、自分とこういうのやったなっていうのを覚えててくれたら」って言ってました。おすすめです。


Q.最後に、読者のみなさんにメッセージをどうぞ!
A.意外に知られていない造形スタジオの存在・・・。ワークショップの後は子どもたちの作品が展示されていることもあるので、訪れてみてください。ステキな作品に出会えるはずです。
 


<インタビュアー感想>

ワークショップで吉川さんが子どもに接するとき、彼らの視線で向き合いながらさりげなくリードする、そのバランスの美しさにいつも感心させられます。延々と続く準備と片付け、緊張の本番の積み重ねが生んだ技なんですね。



<フォトグラファー感想>

吉川さんは片付け、整頓がとてもうまいのですが、撮影中もあっという間に片付けが終わってしまいました。手際も良く、ていねいでスムーズなのです。見習わなければ・・・。同じワークショップスタッフとしてこれからも仲良くよろしくです。




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