猪熊弦一郎は、晩年、マス目に人の顔を入れた作品を多く描いています。きっかけは妻の死でした。妻を想い、人の顔を描けばそのうち妻が出て来るのではないか、と描き始めましたが、次第に顔の造形そのものに注目するようになります。そして、不規則で面白い形をいろいろなバランスで配置することで、次々に異なる顔を描いたのです。本展では、集中して顔を描いた1988、89年の2年間を中心に、猪熊の顔シリーズをご紹介いたします。今年1月に芥川賞を受賞した滝口悠生さんの著書『死んでいない者』の装丁につかわれた《顔80》(1989)もご覧いただけます。
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