杉本博司 アートの起源 Hiroshi Sugimoto ORIGINS OF ART
◎杉本博司によるステートメント │ 科学 │ 建築 │ 歴史 │ 宗教 │
アートの起源
「アートの起源」は2005年の「時間の終わり」2008年の「歴史の歴史」と続いてきた杉本展の延長線上にある。現代美術が常に来るべき時代の行く先を提示し得てきた時代は去った。私達は今、後期資本主義社会の只中で、地球規模での拡大再生産と高度経済成長という破滅のスパイラルの中に巻き込まれ、人間の欲望が制御不能であるという、人類史上の新局面を迎えている。
人類史は折々の難局を乗り越えてきた。氷河期も、大洪水も、文明時代に入ってからは疫病や、革命や、戦争も。そして人類の想像力はその度に発揮されて、一つの困難を乗り越えた暁には、より鋭利な知性が獲得されてきた。しかしこの期に及んで、人類の命運に関する報告書には尽きることの無い数字が羅列されて、暗澹たる気配が漂っている。
人類の想像力はアートとして表現されてきた。今、読めない先を見るためには、振り返らなければならない時がきたのだ。人類の想像力を遡るためには人間の意識の起源を辿らなければならない。アートが今できることは、思い出すことかもしれない、人が人となったころの記憶を。
「アートの起源」は地球が太陽を一回りする時間に遇わせて開催される。地球の地軸が23.4度傾いていることによって巡る四季のリズムに合わせて、科学、建築、歴史、宗教、とテーマ別に展示が行なわれる。
杉本博司