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杉本博司 アートの起源 Hiroshi Sugimoto ORIGINS OF ART
◎杉本博司によるステートメント │ 科学 │ 建築 │ 歴史 │ 宗教 │
◎冬[科学]
人類は4万年から10万年の周期で起こる過酷な氷期を何十回となく耐え忍び、生き延びてきた。いつの頃からか人類は火を自身の支配下に置いた。寒冷期に体温を保持するためには火は欠かせない。ほとんどの動物が火を恐れるなかでなぜ人類だけが火を手に入れたのであろう。それは人間だけが獲得した特性、怖いもの見たさ、つまり好奇心の芽生えのなせる技だったのではないだろうか。天地を揺るがす落雷、発生する森林火災、その現場に恐る恐る近づいて火種を持ち帰る。人間は落雷と火との因果関係を知ったのだ。それはとりもなおさず、知性の芽生え、時間意識の獲得、そして自身を取り巻く外界、すなわち自然は理解できる、と思える心の誕生だった。
人間の科学的な精神は、ルネッサンスを遥かに遡る人類の意識の原初から存在する。展示作品は落雷現場を再現した「放電場」、光の性質を解き明かしたアイザック・ニュートンの『光学』に触発された「偏光色」、マイケル・ファラデーの「ファラデーケージ」の再現、等の作品群から構成される。
杉本博司
1.《偏光色 037》2010年、ポラロイド写真
2.《観念の形 006》負の定曲率曲面、回転面、2006年、アルミニウム、鏡
3.《放電場電飾005》2008年、ライトボックス、白黒フィルム
4.《放電場 128》2009年、ゼラチン・シルバー・プリント
all images ©Hiroshi Sugimoto / Courtesy of Gallery Koyanagi
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