丸亀市猪熊弦一郎現代美術館(以下、MIMOCA)では、2023年6月17日(土)から9月18日(月・祝)まで、企画展「中園孔二 ソウルメイト」を開催しています。
開幕前日の6月16日(金)に、プレス内覧会を行いました。その様子をご紹介します。
展示室写真 撮影:髙橋健治
中園孔二(1989-2015)さんは、わずか9年間の作家活動の中で約600点の作品を制作しました。本展では220点の絵画作品、ドローイングなどの資料約70冊、中園さんのご自宅やアトリエで発見された蔵書や資料を含め300点ほどを展示する、過去最大規模の個展です。
内覧会では担当学芸員・竹崎瑞季より、本展の趣旨について説明がありました。
「中園さんは瀬戸内海に面する香川県という土地に強く惹かれていました。最後を過ごされたこの場所が、約半年間ではありましたが、中園さんの創作活動にとって重要なインスピレーションを与えたところでもあったのかなと思います。」
※プレス内覧会の様子
その後、タイトルにもなっている「ソウルメイト」について展示作品を交えながら解説がありました。
「『ソウルメイト』とは中園さんのノートに書かれていた言葉です。本展では、中園さんがノートに綴っていた"となりで一緒になって見てくれる誰か"という言葉として、中園さんがおそらく考えていたであろう、また求めていたであろう存在を示唆するキーワードとして用いています。」
中園さんは誰かの存在を求めていたことを、言い回しを変えてくり返しノートに書いていたようです。
「他者への希求をエネルギーにするかのように表現を展開していきました。表現すること、特に絵画を描くということ自体が彼にとってのソウルメイト、すなわち親密なる何か、だったのではないかと考えています。」
中園さんは生前のインタビュー映像で「景色は一個」※1と語っています。それはたくさんの絵画作品を多種多様なバリエーションで描きながらも、彼が見ていたものはひとつの景色だったということではないでしょうか。
竹崎は「中園さんが『ぼくが何か一つのものを見ている時、となりで一緒になって見てくれる誰かが必要なんだ』とノートに書き留めていた言葉をふまえ、彼が見ていた "何か"に"見る者=私たち"が近づくことができるような展示空間を目指しました。」と意図を伝えました。
集まったメディアの方々も解説を聞きながら、中園さんが見ていた「何か」を探るように会場を周りました。
本展は「描き続けること」「ひとびと」「多層の景色」「無数の景色」「場所との約束」「イメージの源泉」「ソウルメイト―共に在るもの」という7つのセクションから作品や資料を紹介しています。
「描き続けること」
「ひとびと」
「多層の景色」
「無数の景色」
「場所との約束」
「イメージの源泉」
「ソウルメイト―共に在るもの」
展示室の壁には、中園さん自身がノートに書き留めていた言葉たちを小さなパネルにして配置しており、まるで中園さんがささやいている声を聞くように会場を巡る構成となっています。
『ぼくが何か一つのものを見ている時、となりで一緒になって見てくれる誰かが必要なんだ。となりっていうのは近くでっていう意味じゃない。それを見ているのが自分たった一人だとしたらそれは"見ている"ことにならない。二人以上の人間が同じ一つのものをかかえるということが、それを"見る"ということだ。』(会場パネルより)
ひとつのものを「二人で見る」ということ。中園さんは、絵画を通してどんな景色を見つめ、どのような表現をしてきたのでしょうか。
ぜひみなさまには、中園さんの声を聞きながら展示室を回って頂ければと思います。中園さんが描いた作品があなたにとってのソウルメイトとなり、いつの間にか彼に近づいているのかもしれません。
当館のアンケートやSNSなどを通して、みなさまからの感想をお待ちしております。
文/鈴木 美帆
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中園孔二 ソウルメイト|企画展|MIMOCA 丸亀市猪熊弦一郎現代美術館
※1「Interview with Koji Nakazono,Shibuya Hikerie 8 /Tomio Koyama Gallrey,16 July,2014/監督・インタビュー:鈴木 将也/撮影:山中 慎太郎 Director & Interview :Masaya Suzuki:Chinematographer : Shintaro Yamanaka」より一部抜粋