現在開催中の「猪熊弦一郎展 色に注目!−赤・黄・青から見てみると?−」(2021年1月23日〜3月7日)の見どころをご紹介します。
みなさんは絵画に対面したとき、どこを見ますか?
描かれた形やその配置の妙、筆運びの勢い、表面の質感などなど、また全体を見ることもあれば、気になる一部分に注目することもあるのではないでしょうか。いろいろな絵の見方があるなかで色に注目するのも面白いものです。
猪熊弦一郎も若い頃から色遣いやその効果について考えていました。日記から色について言及した部分をいくつかご紹介しましょう。
「デッサンから懸つて大態の着色をした 中々に面白く行き相だが何だか色のコンストリユリシヨン(筆者注:construction(コンストラクション))が問題に成つて来さうだ。」1933年1月10日
「オランジユの美しさを今更の様に●解した」1933年2月14日
「50号完成す色が赤青黄と原色を使用 強力なものとなる」1981年9月28日
「一枚の画をこんなに色をつけた事も少ない 余り色を使はないものを描くよりもつと考へる事が多くて描けば描く程面白くなるものた 画は重くはなるがまとめるのに色々とやつて見て愉快だつた」1983年1月14日
「ピンク●緑色の配置が意外に美しいスペースを作つてくれた」1992年1月4日
*●は不明な文字
さて、展覧会の会場入り口付近では、色を見る最初の一歩として「赤」、「黄」、「青」それぞれと黒・白を組み合わせた作品を展示しました。まずは各作品の色の美しさ、隣り合う作品との色の違いなどを見てください。
そして会場を進むにつれ、用いられる色の数が増えて猪熊の晩年の作品に特徴的な色鮮やかな絵画に出会えるようになっています。何となく見過ごしていた絵画の中に、あんな色やこんな色を発見したり、それらの色が響き合って生まれる美しい対比や調和を感じる楽しさを味わっていただけると思います。
ところで展示している作品は、どれも色を見てワクワクする一押しばかりですが、ポスターやチラシに掲載する作品は、パッと見て赤!黄!青!が目に入る《二つの門》(1987年)にしました。
猪熊弦一郎《二つの門》1987年 ©︎公益財団法人ミモカ美術振興財団
実は会場でこの作品を目の前にしてじっくり見ていると、最初は同じ色に見えていた各部分の色のなかに、少し違った色があることが分かってきます。それに気づいたときの驚きと喜びは絵画鑑賞の醍醐味の一つではないでしょうか。色に注目することで細部まで詳しく敏感な目で見てみると、これまで以上に絵画がもっと味わい深くなるかもしれません。
展示室撮影:増田好郎
画像の無断転載、使用は一切禁止です。