MIMOCA NEWS 006



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このコーナーでは、美術館で働く人にインタビューし、普段なかなか知る機会のない舞台裏や職員の声をご紹介します。
今回は、ポスターやリーフレットの配送担当松浦えり子さんにお話をうかがいました。


Q.どんなことをするの?

A.展覧会やワークショップ、コンサートなど美術館のさまざまな催しをお知らせする印刷物を仕分けして、それがお客様の目に触れるように、実際に掲示したり置いてくださっている施設やお店にお届けする仕事です。1_送付先の決定、2_準備、3_仕分け作業、4_送付または配布 という流れになります。


Q.具体的には?

A.1.まず、その印刷物を作成している学芸員や広報担当と打ち合わせをします。印刷物の納入時期や種類、配送先の増減などを聞き、宛名や住所の変更をチェックします。
2.配送先が決定したら、チラシやポスターの枚数を確認して、仕分け作業の手順を計画します。また印刷物が届くまでに、宛名ラベルを打ち出して封筒に貼ったり、ポスターを筒に巻いたときに留める帯を作ったりして準備を整えます。
3.印刷物が届くと最初にチラシを仕分けます。20、30、50枚などの束をあらかじめ必要分作っておいて、その後ポスター等と合わせて一気に封入します。直接お届けするポスターは1本ずつ筒状に巻きます。そうすることで折り目をつけずにお届けできます。
4.仕分けが終わるといよいよ発送・配布です。遠いところへは封書で送付します。美術館近くの商店街へは歩いて、近郊の市町へは車で配達します。


Q.どのくらいの件数配るの?

A. 催しによってかなり異なります。例えば、夏のワークショップのチラシなら、主に丸亀市内と近隣市町の小中学校約80校に、それぞれ先生と子どもたち一人一人に渡るように人数分ずつ配ります。一方、展覧会の場合は掲示等してくださるところに全国まんべんなく600件程送付しますし、さらに近隣に直接届けるポスターの筒は400本近くになります。ですがこれも展覧会によって増えたり減ったりします。


Q.一人で全部やるんですか?

A.いいえ。印刷物が仕上がったら、できるだけ早くたくさんの方に見ていただけるように、職員みんなでかかります。特に配布は時間がかかりますので、美術館職員だけでなく守衛さんや清掃業務の方々にもご協力いただいています。もちろん送れば多少手間が省けるのですが、やはりみなさんご好意で貼ってくださっているのですから、できるだけ直接手渡して感謝の気持ちを伝えるようにしています。


Q.仕事へのこだわりは?


A.早くかつ丁寧に、です。いくらきれいにデザインされたものでも汚く運ばれると意味がありません。見る人は気にしないかもしれませんが、単なる事務仕事としてではなく「猪熊」美術館の名前を忘れないようにと自分自身で気をつけています。もう一つ心掛けているのは「貼ってもらっている」という感謝の気持ちを忘れないことです。こだわりと言うより目標です。


Q.苦労する点はどんなところ?

A.苦労というほどではありませんが、配送先が割とこまめに変わりますし、急な変更も多いので、あまり先回りして準備ができません。ルーティンでありながら、実はけっこう柔軟な対応が必要です。ロスを無くして確実に作業するためにも、準備をはじめる前に打ち合わせをしっかりやります。


Q.では楽しみは?

A.出来上がったポスターを見るのはいつも楽しみです(苦しみでもありますが)。きれいなポスターを自信を持ってお渡しできるのもうれしいですし、その場で広げて「いいポスターですね」「いつも楽しみにしている」と喜んでくださるときは地味な仕事が報われた気がします。新たに「貼らせて欲しい」とお申し出いただくときもうれしいです。それから、期間が終わったポスターを、ちゃんと新しいものに張り替えていただいたのを見るのも楽しみの一つです。あと前回より送付先が増えているのに作業が早く終わったときに「よかったなー」と思います。

Q.印象に残っているポスターは?

A.最近では「北大路魯山人展」のポスターです。ずっと閉まったままのシャッターに赤いポスターが貼られたとき、その一角が光ったように華やかになった気がしました。猪熊の「ポスターも美しくなければいけない」という言葉について、「これかー」と納得しました。

Q.お客様へのメッセージをお願いします。

A.ポスターが貼ってあったら気にかけてほしいです。なんとなくそこにあるようでも、時間をかけて、また大勢の人の協力があって貼られているものですし、贔屓目かもしれませんが出来栄えにも自信を持っています。目にとまったらぜひじっくり見てください。


<インタビュアー感想>

大量に刷り上った印刷物が美術館にどさっと積み上げられた瞬間から、それらがお客様の目を刺激するべくそれぞれの場所におさまるまで、が松浦さんの繁忙期だと思っていましたが、実はその何週間も前から、忙しい時間をやりくりしながらもくもくと準備を進めていたことを知りました。彼女のこまやかな気配りと丁寧な仕事は、広報活動における大切な柱の一本となっています。




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