「絵には勇気がいる」。帯に書かれた言葉にびっくりしつつページをめくると、そこ |
には猪熊の半生がつづられていた。 |
幼い頃からへ先のとがった舟や馬、バイオリンなど美しいかたちに強い関心があ |
った。彫刻家のいとこや向かいに住んでいた絵描きのおばさんにはじまり、藤島 |
武二やアンリ・マティスなど巨匠との出会い。目にした物、出会ったいろいろな人、 |
かけられた言葉から大いに刺激を受けている。その観察力、吸収力、掘り下げる |
力はやはり並大抵ではない。そういった経験を積んでたどりついたところに冒頭の |
言葉「絵には勇気がいる」が出てくるのだろう。当時76歳の猪熊は「自分が一番 |
好きなことを、二十歳の時から五十七年の間続けて描いている。美術学校であれ |
ば十数回卒業したことになる。それでいてまだこれでいいと思う作品はできていな |
いように思う。」と書いている。90歳で歿するまでさらに14年余り、勇気を持って描 |
き続けた猪熊はどこに到達したのだろうか。 |
1979年1月日本経済新聞に連載していた文章を、2003年11月23日から始まる猪 |
熊の生誕100周年記念展に合わせて出版したもの。白い表紙に青い帯が印象的 |
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