新・ワークショップ記 |
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1991年10月27日 |
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美術館では、造形スタジオで毎月こども対象にワークショップを行っているが、 |
その第2回は開館した翌年の秋だった。これは白いキャンバスに布や切手、 |
ひも、ボタンなどを自由にくっつけるというものだった。その後も、毎月内容を |
変え、こどもたちの発想、言い換えれば猪熊が何にも代えがたいと考えた、 |
とんでもない宝物を引き出す活動を現在に到るまで続けている。 |
ところで、これらのワークショップの前に、猪熊自身が進行役をした《猪熊先生 |
をかこう!》があった。先日、造形スタジオ横の部屋を片付けていて、ようやくそ |
のとき描かれた絵を見つけたのだが、実におもしろい。《猪熊先生をかこう!》 |
は猪熊が軽井沢の別荘で毎年していたものらしいが、先生の顔をこどもたち |
に描かせるという内容である。もちろん先生の顔は一つである。ところが、画 |
用紙に描かれた顔はさまざまで、まるで別人のような様相を呈しているので |
ある(これらの絵は後で近くの商店街に飾られたり、展覧会にも一部展示さ |
れたので記憶に残っている方もおられると思う)。これは何を意味しているの |
だろうか。猪熊は、描くということは見たままを描くということではなく、自分が |
感じた、自分がつかみとった何かを描くんだよと初めて出会ったこどもたちに |
伝えたのではないかと思う。こどもたちの持つ個性を尊ぶ、自由に描かせる |
環境から生まれた絵だったのだ。 |